2023マンガベスト10 その3(堀尾鉱,伏見瞬,風見2,背川昇,竹田純,西瓜士,今井新,酢豚ゆうき,関野葵,陰山涼,一のヘ,投擲装置,池袋不敗,水田マル,小野未練,吉田貴司,華沢寛治,永井乳歯,井上まち,井戸畑机,匿名潟嬢姫,みそくろ,ほしがた,ほしがた,ねぎしそ,ななめの,しゃりあ,meganedesk(メガデス),伊東黒雲,yaca,中野でいち,小出よしと,今井哲也 ,ツムラネオ,さのさくら,人間が大好き,ジュンスズキ,八月のペンギン,佐藤タキタロウ,okadada,gaburyu, ふぢのやまい,

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伏見瞬

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3.田沼朝/いやはや熱海くん

 

いい人しか出てこないマンガは良い

 

 

2.押見修造/おかえりアリス

 

悪い人しか出てこないマンガも良い

 

1.広田奈都美/ナースのチカラ -私たちにできること-訪問看護物語-

 

 

 

細かく語ることは難しいんですが、『ナースのチカラ』はナース同士の人間関係が複雑にもつれるドラマにグッとくるものがあります。コロナ禍が作品に良い効果を出したマンガかもしれない。介護に対して具体性がある。

主人公が明確でないのもいいし、曖昧さを残さないと同時に残酷さを消さないのもいい。自分が生涯で一番好きなマンガは多分『プラネテス』なんですが、近い感触がありました。

 

 

ほしがた

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東くんの恋猫/菅原亮きん

 

 

 

セーフセックス/原作:森もり子 作画:岩浪れんじ

 

 

8月31日のロングサマー/伊藤一角

 

 

ずっと青春っぽいですよ/矢寺圭太

 

 

インターネット・ラブ!/売野機子

 

 

アスミカケル/川田

 

 

君と宇宙を歩くために/泥ノ田犬彦

 

 

かわいすぎる人よ/綿野マイコ

 

 

SSSS すぎむらしんいち短編集/すぎむらしんいち

 

 

いろんな私が本当の私/原作:長嶋有

 

 

 

怖いリプライ ~ sᴄᴀʀʏ ʀᴇᴘʟʏ ~(しゃりあ)

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⚫︎ずっと青春ぽいですよ /矢寺圭太

 

女装アイドルモノとか部活モノとかジャンルの型にハマらず、ずっと緩やかに日常をやっていて良い。男女混合グループとまではいかないけど、仲のいい距離感がリアルすぎてマジで高校生に戻りたくなる。

高校卒業した以降の人生はエピローグです。

 

⚫︎ねずみの初恋 /大瀬戸陸

 

 

ねずみがずっとかわいい。同棲マンガ。人生って二人で歩いていけるらしい。おれもペアルックっぽいゆるいTシャツ着て同棲したい。

⚫︎オタクがけいおん!の世界で、秋山澪ちゃんになって生活する話 /おにぎりパクパク

 

タイトル読まずに読み始めたから本当にびっくりした。

名前連呼するところや、おにぎりワショーイ、話を牽引しないネタに1ページ使ったりしてるのにテンポがいいし滑らない。

常に漂う哀愁とのほほん具合に泣く。

 

⚫︎ヘブンの天秤 /浄土るる

 

 

若干のさくらももこ感があるゆるさが一番好きなのかもしれん。短編集もめちゃくちゃよかった。露悪に終わらずに善悪に立ち向かっていく話をそのままストレートにやる勇気。

 

⚫︎のあ先輩はともだち/あきやまえんま

 

現実であれば、のあ先輩が処女であることはあり得ないが、その処女性がのあ先輩を"ヤバい女"から、のあ先輩というキャラクターとして立ち上がらせている。

ずっとあきやまえんまは個人間の距離と心理描写が上手いが、今回は特に主人公を寡黙なキャラに設定してるのに、それをやり遂げていてビビる。パイズリ。fanboxで乳首描いてよ。

 

⚫︎最高難度迷宮でパーティに置き去りにされたSランク剣士、本当に迷いまくって誰も知らない最深部へ ~俺の勘だとたぶんこっちが出口だと思う~ /ムロコウイチ

 

初手BUMPの引用で始まるのがアツい。というかめちゃ読みやすい。見栄を切るシーンが上手いので、盛り上がり所が印象に残りやすい。あとメインの3人のバランスが良く読んでいて楽しい。

 

 

⚫︎キレる私をやめたい ~夫をグーで殴る妻をやめるまで~ /田房永子

 

己がイカれてんのか、周りがイカれてんのか、そういう判断を留保しつつ、キレるのをやめたいという部分を明確にして問題解決を図れるのは結構すごいことだと思う。エッセイマンガと私小説的な部分との距離の取り方が良い。

だからといって理性的で論理的な"正解"を探すタイプの人間ではないところもすごい。

 

⚫︎冥冥冥色聖域 /セキアユム

 

メイドリフレ行きたァ〜〜いン……。

絵が超上手い。

性風俗ギリギリの仕事であることを明示しつつ、幼馴染にバレるみたいな展開とかも早めにやるし、その上でしっかり過去話も匂わせるし、やるべきことを堅実にやっている感じが好印象。

主人公と付き合いたい。

 

 

⚫︎みょーちゃん先生はかく語りき /原作:鹿成トクサク 漫画:無敵ソーダ

 

 

バカエロい。

結婚したい。

 

⚫︎よぅ、アクアリスト /原作:黒神遊夜 漫画:神崎かるな

comic-walker.com

変なバカのマンガ。演出凝ってておもろい。上手いわけじゃないし、若干の読みにくさはあるけど、あまりある速度があるし、ちゃんと読めば普通にアクアリウム始められる感じの内容になっていてえらい。セリフもアホ。

 

 

堀尾鉱

https://twitter.com/JJ8423

 

①小松清太郎『ゲーマーが妖怪退治やってみた!』

 

ヒロインの巫女ッチがめちゃくちゃかわいい!毎月コロコロを買うたびに真っ先にチェックしている作品です。惚れました。



河本ひろし『クノイチちゃんはコロコロに載りたい!!~神ネーム賞応募決意編』

www.corocoro.jp

 

女の子が肉感的でえっちすぎる!子ども向け(?)メディアでちょっとえっちな女の子を見たいという願望にストレートに答えてくれる点に爆泣き。

 

 

③横谷加奈子『遠い日の陽』

comic-days.com

面白すぎてビビりました。虚ろなキャラ作画とタッチ線で描写された影、几帳面なコマ割り、そのすべてが物語に奉仕していて感動。

 



こしたてつひろ『炎の闘球女 ドッジ弾子』

 

 


ダイナミックなコマ割りで見せる試合描写に興奮。キャラクターの可愛さと漫画としての熱さが同居している不思議な読み味。

 


⑤ティリー・ウォルデン『are you listening?アー・ユー・リスニング』

 

 

後戻りできない、進むしかない。ロードムービー的モチーフを捌くて手つきの鮮やかさに感動。絵が上手すぎる。

 



⑥まえだくん『ぷにるはかわいいスライム』

 

 

 

ぷにるが相変わらずかわいすぎる!「かわいい」を巡る諸問題に丁寧に切り込んでいく姿勢が大好きです。



衛藤ヒロユキ魔法陣グルグル2』

 

あの『魔法陣グルグル』が時を経てもなお「あのまま」のテンションで続いていることに感動を覚えざるを得ない。めちゃくちゃ面白いです。



⑧木村風太『運命の巻戻士』

 

 


本格的なループSFを読みやすく、そして熱く、捌き切る手腕に爆泣き。『葬送のフリーレン』とのコラボにも爆笑しました。


⑨不死デスク『【危険】闇屋敷にマジでいた【閲覧注意】』

tonarinoyj.jp

ホラー漫画でも幽霊漫画でもなくあくまで「心霊ビデオ」漫画であることに徹する姿勢に感動。心霊ビデオ好きとして1コマ1コマ頷きながら読みました。



⑩秋おこ『超バニアバトル バニバト!』

rookie.shonenjump.com


キッズアニメ好きなら膝を打つこと間違いないしなギャグの連続。昨今の子ども向けホビーを巡る問題意識の的確さに感動です。

 

モバイルいわし

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・春あかね高校定時制夜間部

 

 

「夜間定時制高校」という響きから何となく感じられるような、各人の人生ままならない感、それに対する諦念、、みたいなものがジトッと滲んでいて、その上でみんなどこか楽しそうにもしてて、、独特の雰囲気が出ていて好きです。ぜひとももっと続いて欲しいです。

 

ダンジョン飯

 

 

昨今のテレビゲーム的なファンタジーではなく、80〜90年代ファンタジーブームのファンタジー世界でグルメをやる、というコンセプトはまるで昔ながらの屋台みたいなのに、実際のメインコンテンツはグルメというよりSFで、食べることをテーマにどこまでもスケールアップしていくメインストーリー、かと思えばスキップとローファーみたいな人間関係のお話もあり、ギャグも冴えてて画力は凄まじく、なんか巨大デパートのような作品でした。登場人物たちも全員好きだし、最後までずっとおもしろかったです。

 

SAN値直葬!闇バイト

 

 

クトゥルフ神話と闇バイトを混ぜ込んで炊いたホラーギャグ4コママンガですが、単行本1巻の頭に描きおろしのカラーページが追加され、それを読むたびに泣いてしまいます。本編もおもしろいです。

 

 

・隣のお姉さんが好き

 

 

マイ・フェイバレット・コミュニケーション・バトル・マンガ2023でした。

 

 

・恋は忍耐

ultra.shueisha.co.jp

 

なぜ人は恋をするのか。まだ数話しかありませんが、これは自分のためのマンガだと感じました。

 


5つですけど、、よろしくお願いします、、

 

@maritissue

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①みどりの台所

 

 

マジでBEST!

ポストアポカリプスの世界におけるビーガングルメ

芳文社っぽい絵柄で闇深さもありストーリーも進む

②インターネット・ラヴ!

 

 

まさにY2K岡崎京子マインドすら感じるが、セクシュアリティの表現部分は商業ではかなり最先端

 

③つばめアルペン

 

 

山登り漫画①

『イジめてごっこ。』の南文夏 はやくこの絵柄で成年描いてほしい

 

④乙女の地球の走りかた

 

 

山登り漫画②

 

⑤パラレルリープ・シンドローム

 

 

⑥炎の闘球女 ドッジ弾子

 

 

⑦糸を撚る

https://amzn.to/48KuRHA

 

⑧君と宇宙を歩くために

 

 

⑨ころぶところがる

 

 

⑩リセットのない世界より

 

 

 

 

meganedesk(メガデス

https://x.com/meganedesk?s=21

 


heisoku 春あかね高校定時制夜間部

 

・キャラそれぞれのエピソードの具体性が強くて面白かったです.



 山口貴由 劇光仮面

 

・ヒーロー観の迫力がすごいです.



西尾維新,岩崎優 暗号学園のいろは

 

 

・駄洒落や掛け言葉が無限に湧いて出てくるのが好きです.

 

今井新 フラッシュポイント

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・不意打ちの倍返しパロディで腹抱えて笑いました.

 

斉藤なずな 遡る石

bigcomics.jp


・僕もグリ石になりたいです.

 

島袋光年 ヤバイ

shonenjumpplus.com


・ヤバイだけで何ページも持たせられるのがすごいです.

 

岡田索雲 アンチマン

comic-action.com


・比喩的な描写の挿入がうまくて唸りました.

 

ママの飯がマズくて:長女編

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・メシマズ嫁ネタを消化したら今度は娘視点で続編を描くというネタの再利用方法が衝撃でした.

 

すあま TwitterID:@suama7700

 

・他人がミスをして嬉しいというネタだけで4コマ3本分引き伸ばす腕力がすごいです.

 

鬱とエロスと委員長1~3 | hujikirio

hujikirio.booth.pm

・2023年イチ性癖に刺さりました.

 


伊東黒雲

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・劇光仮面

 

 


まだ実相寺二矢という名前のただ事でなさをよく飲み込めてない。

 

 

・商店街のあゆみ

 

 

panpanyaの幾何的なイメージとの相性の良さが、家屋や地図と交差することにより浮き彫りになっていていい。『自己隔離期間の線形代数I』はまだ積んだままです。

・出会って4光年で合体

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アメリカにはトマス・ピンチョンがいるかもしれないが、日本には太ったおばさんがいる。

 

・ころぶところがる

 

 


カロリー。黒田硫黄化学同人や産業図書から漫画を出す世界を幻視してしまった。

 

・夏・ユートピア

 

 


密度を上げても息苦しくならない上手さがあってよかった。

 

ジュンスズキ

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2023年に発売された5巻以内の「忖度抜きで本当にめちゃくちゃ面白い漫画」という観点で選びました。

1位『正反対な君と僕』阿賀沢紅茶

 

 


作者は現在、そしてこれからの人間を圧倒的な観察眼で高精細に描ける人だと思います。
間違いなく2023年で一番面白かった漫画です。

2位『これ描いて死ね』とよ田みのる

 

 


全漫画家及び漫画家志望者及び漫画を愛する人間たち必読の書。
マンガ大賞受賞は通過点のひとつで、キャラも揃ってますます面白くなっていく最高の青春譚。

3位『出会って4光年で合体』太ったおばさん

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迸る情熱に当てられて呆然としてしまう。
この作品に出会えたことが確実に人生の糧になったと言える大傑作。

4位『住みにごり』たかたけし

 

 


構成力がすごい。1巻から醸成されてきた不穏な空気が5巻で大嵐になる。
あらゆる伏線が最悪の状況を導くように回収されていく負のグルーヴに快感すら覚える。

5位『ふたりスイッチ』平本アキラ

 

 


シンプルかつプリミティブな男女入れ替わりラブコメに適宜挟まれていく様子のおかしさをフックに物語に没入させる手腕。
とんでもないものを読まされている感があります。

6位『アタックシンドローム類』吉沢潤一

 

 



令和のトランスグレッシヴ・フィクション。この時代にこれをやる胆力。
読者の脳髄に深く刻み込もうとする意思が10年後も語り継がれる傑作になることを証明すると思います。

7位『セーフセックス』原作:森もり子、作画:岩浪れんじ

 

 


心の栄養価がはちゃめちゃに高い漫画です。
主人公2人がお互いに好ましく思ってる要素があって、一緒にいる時の空気が絶妙に噛み合っていく過程がとても心地良い。

8位『ダイヤモンドの功罪』平井大

 

 


1巻3話までの『おおきく振りかぶって』の皮を被った超絶ダークな野球マンガだという印象が、4話以降のU12日本代表編で複雑な心情描写を見事に表現した超絶面白野球マンガに変化しました。

9位『戦車椅子-TANK CHAIR-』やしろ学

 

 


世界観、キャラ、外連味、すべてが渾然一体となって押し寄せてきて、揉みくちゃにされる楽しさがあります。
4巻以降の展開がどうなるのかという期待に、更に物語を加速させて応えてくれる信頼できる作品。

10位『劇光仮面』山口貴由

 

 


正直、3巻まで何を読ませられてるのかよくわからないヤバさがあったんですが、4巻で最高に面白いヤバさが発生しました。
すごい。

 

 

 

 

八月のペンギン

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★謹賀新年 2023年私的マンガベスト10★

①町田洋『砂の都』
齋藤なずな『ぼっち死の館』
③薄場圭『スーパースターを唄って』
田島列島『みちかとまり』
⑤オカヤイヅミ『雨がしないこと』
平井大橋『ダイヤモンドの功罪』
⑦ほそやゆきの『夏・ユートピアノ』
⑧村岡栄一『去年の雪』
⑨田沼朝『いやはや熱海くん』
オジロマコト『君は放課後インソムニア

本年もよろしくお願いいたします。

今回も帰りの新幹線車中でまとめました。乱文失礼します。抜けもあるはずです。ご容赦ください。

例年どおり、昨年中に単行本第1巻ないし最終巻が発刊されたマンガ作品のランキングです。以下に選評を記します。

①町田洋『砂の都』

 

 


広大な砂漠をさすらう丘。そこには人の記憶から生まれた建物が並び、人々が穏やかに暮らしている。その町で青年と少女が出会う。
フランツ・カフカ安部公房スタニスワフ・レムといった世界文学に匹敵する想像力も、それに世界としての形を与える研ぎ澄まされたペンも神業です。
変化と、それに伴う切なさを描いた物語です。作家をしていた少女の姉は、愛する伴侶を得たことで物語への興味を失ってしまったと告白し「いつかは消えてしまうものを売り物にしてしまった」と重い言葉をこぼします。あらためて、町田洋先生の9年ぶりの単行本を手に取ることができた僥倖に感謝せずにはいられません。
無駄のない絵についても少し触れておきます。すべてが美しいのですが、とくに猫のような少女の黒目がちの目が印象に残ります。オーバルではなくスクエアに近い瞳の輪郭が蜃気楼のように揺らいでいて、それが彼女の内面を表しています。記号的なマンガ絵の魅力を再確認させられました。

齋藤なずな『ぼっち死の館』

 

 


独居老人たちの団地暮らしの現実を直截に描く。
タイトル通りの内容ですが、老人たちの会話は軽妙で、ユーモアと毒があり、悲惨さはありません。1946年生の作者は、連想で次々と連鎖していくイメージを絵にして、老いても想像世界が衰えないことを示しています。
決して達観することなく、日々の暮らしを通して、生きていることそれ自体を讃える作品。若い描き手には辿り着けない境地です。話の構成が緻密で作画も線が多く、流し読みを拒絶し、再読を要求しさえするタイプのマンガですが、言い換えれば、噛めば噛むほど味が出るということ。このマンガの長所です。

 

③薄場圭『スーパースターを唄って』

 

 


母と姉を亡くし借金返済のためヤクの売人となった17才の少年が、天才トラックメイカーの親友とラップを始める話。
大阪の貧困街のひりつく空気。容赦のない暴力。本作の閉塞感は2023年のリアルにほかなりません。光を掴もうと初ライヴに挑む第1巻ラストは鳥肌必至です。
人物配置や物語構造が『まんが道』的な王道で、題材や演出の新しさとバランスがいいです。堀越耕平や浦部はいむに似た少しラフな絵も、人物の表情や背景の細部がよく描けています。コマの間白に横書きで入るモノローグが、マンガで通常つかわれるアンチゴチではなくアンチック体オンリーなのも効いています。この一工夫でメタな感じが出ています。
それから、やはりアナログ作画がいい。反社組織で売人をやらされている主人公が、HIPHOPに救いを求め、自己表現に目覚める物語には、作者のフィジカルなタッチがダイレクトに伝わる表現がベストです。
モデルとなっているラッパーの存在すら知らずに読みましたが、そんな素人にも届く圧倒的な熱量が本作にはあります。

田島列島『みちかとまり』

 

 


8歳の夏、まりは竹藪でみちかを見つけ、彼女を神様にするか人にするか決める権利を得る。二人は級友・石崎のセーブデータを求めて冥府へ赴く。
田島先生のユーモア溢れるワードセンスと可愛い絵柄で中和されていますが、ガールミーツガールのダークファンタジーです。
千と千尋の神隠し』のような少女の成長譚になるはずですが、本作の異界はずっと余所余所しくて恐ろしい。子供の一人くらい容易く飲み込んでしまう深淵が覗いています。彼女たちはあまり世界に祝福されていません。成長したみちかの「語り」が要所要所に入りはするものの、緊張を強いられる物語です。

⑤オカヤイヅミ『雨がしないこと』

 

 


30歳になるOL・花山雨(マイペース、料理好き、アロマンティック)をめぐる人間模様を描く連作短篇。
マンガを安易に「文学」と形容するのは慎むべきですが、オカヤ作品はそうとしか言いようがありません。一見穏やかなのに迂闊に触れると怪我をしそうです。
タイトルの「雨がしないこと」とは「恋」であり「結婚」でしょう。パートナーを持たずに一人で生きていくアロマンティックの生きづらさと自由さとが、様々な視点から浮かび上がる構成はさすがです。読みながら同じくアロマンティックの人生をテーマとする(たぶん)『葬送のフリーレン』を連想しました。

平井大橋『ダイヤモンドの功罪』

 

 


スポーツの天才であることを除けば素直な普通の小5の少年が、しかしその圧倒的才能ゆえに周囲との軋轢を生む。
未熟さゆえに残酷な少年たちの危うい関係を見せる心理劇であり、少年の才能に魅せられ、狂っていく大人たちを描く一種のファム・ファタール(雰囲気からいって「オム」ではありません)ものでもあります。とにかくよく人間が描けています。野球マンガを期待すると肩透かしを食わされますが、抜群に読ませるマンガなのは間違いありません。
物語では野球初心者の主人公がU-12野球日本代表のエース投手に選抜されますが、興味深いことに、作者自身も本作が初連載。画力を見るかぎり、マンガを描き始めて日が浅いのではないかと思われます。
この作者の描く不気味さは、椎名うみ青野くんに触りたいから死にたい』に似ています。どちらもコミュニケーション不全の話。作画に関しても、キャラクターの表情は影響を受けているように感じられます。作者が、もし『青野くん』に触発されたのがきっかけでマンガを描き始めたのだとしたら、紛れもなく天才です。

⑦ほそやゆきの『夏・ユートピアノ』

 

 


ガール・ミーツ・ガール(非恋愛)を描く二本の中篇を収録。
コマ割りが縦横どちらに読み進めるべきか分からず不親切だったり、シーンによっては誰が何をしているのかが分かりにくかったり、読み手を選ぶマンガです。でも自由で面白い。静かで清潔な時間が流れています。
作者はひとが修練して身につける技術に魅力を感じる人で、とくに円運動(ピアノの構造、バレエのターン)がお好きなご様子です。トリビアルな知識を披露するだけに終わっていません。舞台が北海道なのも両作品でうまく生かされています。読んでいて堀江敏幸の短篇集『雪沼とその周辺』が浮かびました。
マンガが好きな読者ならば、高野文子イズムが迸る表題作の冒頭数ページを見ただけで、びびっと電流が走るに違いありません。

⑧村岡栄一『去年の雪』

 

 


還暦を過ぎた作者が「逢う事が叶わなくなった人」を回顧する6つの短篇を収録。
作者は第6話の執筆後に病で右半身不随となり、筆を折ったといいます。この単行本は作者の実娘が担当編集として世に出した、作者の両親、友人、恩人、そして作者自身の生きた証にほかなりません。
村岡は1949年会津生。中学時代に岡田史子らと同人活動を行い、上京して17歳で永島慎二のアシスタントとなり、翌年に雑誌『COM』でデビュー。その後はギャンブル劇画家となります。本単行本にも岡田史子滝田ゆうとの交流が綴られていますが、より痛切に胸に迫るのは両親との思い出を物語る短篇のように思います。

⑨田沼朝『いやはや熱海くん』

 

 


高1、父子家庭、ひとりっ子、美形でゲイで恋愛体質の熱海くんと、リベラルで偏差値高めな周囲の人々とのダウナーな対話劇。
絵柄は全然違いますが、画面全体が白っぽくて初期の大友克洋の飄々とした雰囲気を思わせます。良質のコメディ。わりと思索的です。
ちなみに、短編集を『四十九日のお終いに』と併読したところ、作品によっては抜けのある背景の描き方(というより空間の作り方)、オノマトペの使い方、鼻の穴や影の表現等に大友克洋の画法が明白に見てとれました。あまり見ない影響の受け方です。
この短篇集と『熱海くん』に通じる創作テーマのひとつに「『互助会』的な繋がり」があります。男性同士の間にそれが描かれる例は貴重です。新規性があると思います。

オジロマコト『君は放課後インソムニア

 

 


夜に眠れない共通点で親しくなった高校生男女のラブコメを、大友克洋フォロワーが描く。
「気分」を分節して感情の機微を伝えるコマ割りの技術は神業レベルです。元々高い画力も、6巻辺りからさらにレベルアップ。伸びやかになった線に、自信がうかがえます。
不眠症の要素はあくまでフックで、ヒロインは別の困難を抱えています。作者は物語をメロドラマにすることもできた、というより、その方が楽だったはずです。でも、力を込めて敢然と踏みとどまってみせた。その心意気を称えます。悲劇が現実にありふれていればこそ、読者を勇気づける物語には価値があります。
友人たち皆いい子だし、誰よりもヒロインがいい子だし、そのヒロインとの甘酸っぱい高校生活が恐るべき解像度で描き出されるので尊いです。「青春様」です。真面目な優等生で、でも、未熟さゆえの傲慢さを持った主人公が、自らの無力を思い知らされることで一回り成長する、その展開も青春しています。
夜空にひときわ明るく輝く一等星のようなラブコメマンガの傑作です。昨年は優れた長編マンガが数多く完結しましたが(ヤマシタトモコ『違国日記』、押見修造『血の轍』等)、そのなかでもマンガ好きにあまり読まれていなそうな本作を入選します。ちなみに、舞台は令和6年能登半島地震で被害が甚大だった七尾市です。復興を祈るばかりです。

以下も面白く読みました(順不同です)。

よしながふみ『環と周』
よしながふみの新作が面白くない訳がありません。正直に選べば10選に入ります。「殿堂入り」という扱いで今回は敢えて外しました。
やはり圧倒的な筆力です。格が違います。決まって環と周という名の二人が登場する五本の連作短篇にエピローグが付きますが、いずれも甲乙つけがたい濃密な人情話。夜中大泣きしたせいで翌日まで瞼がひりひり痛んだのをよく覚えています。繰り返し読み返すことになるだろう一冊です。

□冬野梅子『スルーロマンス』
文字がべらぼうに多く、時折妙な心理の図解が入る、32歳女性2人組の『HUNTER×HUNTER』です。脳内をぐるぐるめぐる言葉を飾ることなくそのままアウトプットするところに、この作者の凄みがあります。「真実の愛」というワード、なかなか恥ずかしくて書けませんよね。
前作の主人公あみ子には作者と近い属性が与えられていたのに対し、本作の主人公二人、マリと翠はより創作の度合いが強い印象。そうしたキャラクターと状況を掛け合わせた思考実験の結果としてストーリーが生まれてくるライヴ感が魅力です。展開が全く読めません。

坂上暁仁『神田ごくら町職人ばなし』
森薫を思わせる緻密で職人的な作画で江戸の職人(桶職人、刀鍛冶、紺屋、畳刺し、左官)たちの手仕事を紹介する連作短篇。しかも良質の人情話に仕上げています。基本的に主人公は女性で、唯一男性の畳刺しの話も舞台は遊廓。花魁が重要な役割を担っています。

□エルド吉水『龍子』
令和の園田光慶。「これが『劇画』だ!」という情念がアナログ作画のペンに籠り、インクに迸っています。『女囚さそり』オマージュの主人公が外連味たっぷりに躍動。時系列が錯綜する語りも線がごちゃつくアクションも読みやすくはないけれど、劇画衝動の前には些事にすぎません。

ゴトウユキコ『天国』
短篇四本を収録。椎名うみ先生が帯文執筆者の一人なのは、「天国までひとっとび」が『青野くんに触りたいから死にたい』っぽいからでしょうか。角田先生は角田晃広に瓜二つ。山本直樹「夕方のおともだち」オマージュの場面も。個人的には「迷子犬とわたしたち」にいちばん胸をしめつけられました。

□我妻ひかり『パコちゃん』
パコちゃんは三十路を迎えるフリーター。既婚男性から関係解消を告げられた日に、21歳大学生からアプローチを受ける。シモが緩めでメンヘラ気質の女性の生態を山本直樹風のタッチで淡々と描き出します。林静一も少し意識している気がします。間違いなく面白いです。

□スタニング沢村『佐々田は友達』
カナヘビや虫が好きな陰キャの佐々田とギャルっぽい見た目で陽キャの優希、同じクラスでキャラが正反対のJK二人が親しくなっていく。マンガが恐ろしく巧い。高野文子が脳裡をよぎるほどのセンスです。ペス山ポピー名義の作品では爪を隠していたんでしょうか。

売野機子『インターネット・ラヴ!』
インスタで繋がった日本人と韓国人、バイセクシャル同士の爽やかなBLマンガ。絵、コマ割り、そしてモノローグ。作風が暗くなる前の岡崎京子を意識していて「東京ボーイズブラボー」といった趣。作者がこれほど器用で達者なマンガ家だとは。お見逸れしました。

□原作森もり子、作画岩浪れんじ『セーフセックス』
『ギャルと恐竜』の森と『コーポ・ア・コーポ』の岩浪、夢のタッグが生み出す、気怠くて刹那的で、それでいて優しさと配慮に満ちたギャル風の男女の恋愛話。距離感に敏感すぎると、踏み込んで関係性を進展させるのがかえって難しいんですね。勉強になりました。

□heisoku『春あかね高校定時制夜間部』
定時制高校夜間部を舞台に、少し違った高校生の「日常」を描く。13歳で精神病院に入院し、入院中に両親が亡くなり、数年前にNPOの支援を受けて退院に至るまでの四半世紀を失った40歳の鉄黒よしえというキャラクターの存在が強烈。エピソードとしては第5話のラスト、あんみつの話が白眉。目頭が熱くなること請け合いです。

□地球のお魚ぽんちゃん『霧尾ファンクラブ』
ともに級友の霧尾くんが大好きな女子高生・藍美と波、友人兼ライバルの二人による漫才の掛け合いのような対話劇。『桐島、部活やめるってよ』インスパイアのコメディです。ただし本作には、おそらく隠し事があります。それが本作に緊張感を与えています。

□中原ふみ『ナッちゃんはテンションで水深が変わる』
感情の起伏に応じて生息する水深の異なる生物が具現化されるJKの学校生活を描く。少し不思議な主人公と、彼女の能力を理解し寄り添う友人たちとの交歓が愛らしい。些事で一喜一憂する思春期の気分と、成長に伴う変化を肯定する爽やかな作品です。

うぐいす祥子『僕に殺されろ』
不登校気味の男子中学生が「化け物」を殺すための力を手に入れる。安彦良和を思わせる流麗な線で描かれる黒髪ショートで切れ長の目がクールな女子高生・朝倉先輩が本当に美人。人は誰しも心のなかに童貞男子を飼っていますが(適当)、その少年の魂が震えます。

□泥ノ田犬彦『君と宇宙を歩くために』
普通のことができず困っているのに周囲に理解されず「ヤンキー」になってしまった高校生が、自分よりもさらに普通から外れた発達障害の転校生と出会い、少しずつ変わっていく。生きづらさを抱えた子たちが生き生きと描かれます。みんな本当にいい子です。

panpanya『商店街のあゆみ』
ひと皮剥けた印象です。収録作がすべて面白いのは驚異。なかでも「うるう町」は発想、構成とも抜群です。日常のなかに積極的に面白みを見出だしていく「正しいおにぎりの開け方」も作者ならでは。個人的には表題作の最終コマ、主人公の後ろ姿に完全にやられました。

福島鉄平『放課後ひみつクラブ』
キュートすぎます。降参です。絵も可愛いしボケとツッコミの言語センスも並外れています。そして何よりマンガが巧すぎます。学園の秘密を探るコメディを、多層レイヤーを駆使した少女マンガ風のトリッキーな画面構成で読ませるところに本作の妙味があります。

□柿沼こうた『ゆうれい色の日常』
可愛らしい絵柄で日常に存在する幽霊と人との穏やかな交歓を描いた掌篇を全26話収録。温かい気持ちになれます。モノトーンながら、表紙絵のような優しく淡い色彩、すなわち「ゆうれい色」が不思議と全編に感じられます。その秘密は多用されたカケアミにあります。少し気になったのは、幽霊を含む登場人物の性別の偏り。基本的に女性ばかりです。納得する気持ちが半分、それはちょっと安易だと思う気持ちがもう半分。難しい問題です。

□ウラモトユウコ『天沢さんを推してます。』
ソシャゲのサービスが終了し突然推しキャラとの別れを経験した女子高生が、「偶然」推しと同姓同名のおにぎり移動販売の女性と出会い、親交を深めていく。作者はお洒落な高野文子フォロワーの印象でしたが、本作は、さべあのま先生の遺伝子を強く感じる作風です。わりとベタな話で、そこがいいです。

山本ルンルン『涙子さまの言う通り』
舞台は昭和初期の東京。刑事・沢渡はある少女の殺害に新興宗教の教祖・犬養涙子が関与すると睨み、行動を監視しはじめる。人形のような美貌で命を玩ぶ涙子の破滅が約束された物語が妖しくも魅力的です。刑事の見た目と雰囲気は坂田靖子作品を思わせます。

□井田千秋『家が好きな人』
若い女性5人のそれぞれの家と暮らしを、端正で可愛らしく温もりのある絵柄で丹念に描出。作者の本業はイラストレーター。フルカラーで、読み味はマンガというよりBDに近い印象。住人の趣味や嗜好に合わせて細部まで考え抜かれた部屋を眺めるのは思った以上に楽しいです。

□天堂キリン『再生のウズメ』
28歳で女優の夢を諦めて以来12年間引き籠もっていた40歳女性が便利屋で働き始める。藤本由香里によれば、少女マンガの根底には「私の居場所はどこにあるの?」という問いが流れています。本作は少女マンガの正統です。作者の満足のいくまで描いてほしいものです。

□ウオズミアミ『冷たくて柔らか』
彼氏にふられた33歳の宝は勤め先で中2の頃の同級生・エマと偶然出会う。女性同士の20年越しの恋を描く少女マンガ。宝がエマの想いを知らないこと、エマが既婚なこと、この二つが絶妙な距離を生んでいます。絵もコマ割りもモノローグも集英社らしく正統派でウェルメイド。

□綿野マイコ『かわいすぎる人よ!』
地味な見た目の女子中学生・メイと、32歳の美形すぎる叔父(亡き母の弟)との同居生活を描く。1970-80年代の乙女チックラブコメ風の絵柄や雰囲気があって、作者が新人とは思えません。一話が短くて、読み味もさらりとしていて、それでいて心が動かされます。

□こいしゆうか『くらべて、けみして 校閲部の九重さん』
作者が出版業の「縁の下の力持ち」である新潮社校閲編集部に取材した、エッセイマンガ形式のお仕事マンガ。以前読んだ『私でもスパイスカレー作れました!』も良かったし、この作者は力のある描き手ですね。変則ゴマも多いわりに読みやすい。

秋★枝『放課後メタバース
コミュ力の高いJKと図書委員の作業中に対話するなかで、コミュ力の低いDKが少しずつ変わっていく。設定は『僕ヤバ』の二番煎じながら、作者らしい生真面目さと潔癖さは相変わらず。女性キャラの大きなバストを「まなざすことの禁止」は本作でも遵守されています。
ひと並みに性欲がある主人公が、にもかかわらず、好きになったヒロインには一切性的なまなざしを向けず、「ともだちになりたい」「嫌われずに距離を詰めたい」と純粋な思いを抱き続けるところが、かえって歪で、実に作者らしい。秋★枝のマンガはある種の思考実験だと思います。奇妙な魅力があります。
そういえば、眼鏡の奥の目の表現にデジタルならではの工夫がありました。やはり変なところにこだわる作家さんです。

以上、おつきあいいただき、ありがとうございました。